麹菌S-03株

Aspergillus oryzae S-03 (アスペルギルス オリゼ S-03) は, 日本の国菌とも称される麹菌の一種です。
麹菌は日本酒や醤油, 味噌などの発酵食品の製造において大きな役割を果たしており,「日本の食文化」には不可欠な発酵用糸状菌 (カビ) です。私たちは, S-03株を特定の条件化で培養すると, 歯周病菌 (ジンジバリス菌) の産生する毒素に対する不活化物質をつくることを発見しました。同時に, ジンジバリス菌に対する増殖抑制効果のあることも見つけました*。S-03株による発酵産物は, デンタルヘルスケアに利用できる可能性を秘めています。

ジンジバリス菌に対する活性
医学の進歩により, 多くの疾患や感染症のリスクが軽減してきたものの, 歯周病に罹患するヒトはかなりの数に上ります。歯周病は口の生活習慣病とも言われ, 成人のみでなく小中学生でも罹患します。近年, 歯周病菌が血流に乗って全身を循環することで, 全身疾患のリスクと関わりがあることが明らかにされてきました。
歯周病の主な起因菌 (ジンジバリス菌) に対するS-03株の発酵エキスの抗菌活性を調査したところ, 抗菌活性を持つことが見出されました。さらに, ジンジバリス菌の産生する毒素 (ジンジパイン) に対しても濃度依存的に阻害活性を示すことが明らかになり, S-03株にはジンジバリス菌の増殖を有意に抑制する効果があることが示されました。
* Danshiitoodol, N., Yamashita, H., Noda, M., Kumagai, T., Matoba, Y., Sugiyama, M. Aspergillus oryzae S-03 produces gingipain inhibitors as a virulence factor for Porphyromonas gingivalis. (2014) J. Bacteriol. Virol. 44: 152-161.
